答弁書、準備書面の書き方のコツがある。本人訴訟初心者なら参考になると思う。
前回の記事の続きで、「反論」に重きを置くので答弁書にした。原告としても有用なはず。
訴状・答弁書などの準備書面は、争う相手方に読ませる文章ではない。裁判官に読ませる文章だということを意識して書く必要がある。 サンプルの架空の答弁書をみながら解説してみる。
答弁書・準備書面の書き方
日付や事件番号の位置はここじゃなくても右上・左上にまとめてもいいし、日付は答弁書の提出日でなく第1回の弁論期日にしても問題ない。僕は意思表示の起算点とか気にする人なので、準備書面の完成時にはその意思があったという意味を持たせるべく書面の完成日にしているけれど。
原告・被告ともに書面の送達場所を住所以外にしたい場合は、送達場所としてその住所地を書く。
相手方に弁護士がつけば、法律事務所が送達場所として書かれているはずだ。
■第1
まず、答弁書なら原告の請求の趣旨に対して、請求の棄却と訴訟費用は相手の負担とすることを求める。
■第2
サンプルのような意味不明な事件はないと思うが……笑
たいてい、請求の原因にずらーっと相手の主張が書かれている。それに対応させて認否を書く。
※文体は「です・ます調」ではなく「だ・である調」で書く方がいい。
認めるものは「認める」
否認するところは、「否認する」
知らないことは、「不知」
部分的に認めるなら「~は認める。その余は争う」などと書く。
よく準備書面に、「否認ないし争う」と書く弁護士もいるが、相手の事実を争う姿勢を示せば足りる。
裁判官は、訴状を読み始めたときから心証を形成していく。答弁書で想定される反論や争点を訴状から想像する。
答弁書を読んでいき、被告がどこを認め、どこを争っているか、訴状にマークしていく。
つまり、答弁書は争点を設定していく作業でもある。
反論せずスルーしてしまうと争いのない事実とされて判決に影響するので要注意。
ここから重要
■第3
先手の原告は訴状の請求の原因に時系列や経緯を書く。
被告は後手なので、先手の原告がやはり裁判は有利である。
そこで、被告視点での時系列や経緯を分けてかくと裁判官もイメージしやすくなってよい。当事者にとって当たり前となっているできごとでも、裁判官はまったくわからないゼロの状態から書面だけで状況を理解しなければいけない。
そこで被告側としても時系列や経緯を分けて書くことで、双方の状況理解につながる。
そして次が、この記事でいう「おすすめの書き方」である。作文スキルが高い人ならよくやっている、なんてことないことだけれど。
■第4
答弁書の第2で「否認する」としたら、その箇所に長々と書く人が多い。しかし、初心者がこれをやると、ダラダラと書いて裁判官からすると読みにくい文章になってしまいがち。
すでに答弁書の第2の2で 認否を明らかにしているので 裁判官はすぐに争点を把握できる。
このように新たにブロックを用意し分けて書くことで、争点も明確となっているため作文しやすい。新たに争点を作った場合は、相手はそれに反応しなければいけないため、内容によってそれについては先手を取れる。
攻められているところを一旦仕切り直せる意味もある。こちらの言い分の方が正しいと反撃に出るような気分で書くのがいい。
GUILTY GEARのバーストみたいな笑
本人訴訟初心者の頃に、元裁判官で憲法担当の弁護士に教えてもらったやり方だが、とても書きやすい。訴状以降の相手の準備書面に対して、ずっとこのスタイルで書いている。
( ̄ー ̄)b おすすめ♪
それと、答弁書の第4の1などに見出し/サブタイトルを書いている。これは必ずやった方がいい。訴状や準備書面でも。基本中の基本だ。その段落で何が書かれているのかすぐわかる。
もちろん、その事実を証する証拠ナンバーを()書きで後ろに書くとわかりやすい。
準備書面を書く上で常に意識すべきことは、裁判官に見た目も見やすく、読みやすい文章を心がけること。裁判官は不足していて、一人の裁判官が受け持つ事件は200を超える。ひとりに費やす時間は非常に少ない。
そんななかで闘うのだから、裁判官に親切な文章を心がけないといけない。日々の疲れからとんでもない判決を出されてしまったら困る。
親切な文章を書いたからといって必ず勝てるというわけではないのだが。
σ(^_^;)
裁判は証拠で決まると思われているが、文章でも決まる部分が大きい。裁判官もひとりの人間だから。
まとめ:答弁書の心がまえ
答弁書は、訴状に対して「どこを争点とするか」を決める争点の設定作業でもある。これを意識しなければいけない。
僕は普段、行政と闘うことが多く、第5などに争点をまとめたり、新たな争点を書いたり、「この法令は甲第A号証のとおりであるとの裁判所の見解を求める」と裁判所へ法令の解釈を求めたりもする。ブロックごとに分ければ書きやすい。
書面を読み込む時間が非常に少ない裁判官にどれだけ事案を具体的にイメージさせられるか、どれだけ読みやすい文章を書けるか、がとても重要だ。
一応、添えておかないと……
また、前回の記事のとおり、被告が本人訴訟だと、やはり弁護士がついている原告の勝率が高い。経済的に余裕がなく弁護士費用が払えない場合も、国が設けた法テラス(民事法律扶助制度)を利用することで、弁護士に相談・依頼できる。
分割払い、相手から得た勝訴金から払う、などさまざまな支払い方法に対応している。生活に困窮していれば立て替えた費用を免除する制度もある。
①弁護士費用を払うとマイナス。 ②弁護士が事案を受任してくれない。
といった場合でなければ、なるべく弁護士に依頼した方がいい。
普通の人にとっては、裁判なんて一生のうち一度か二度あるかどうかだと思うし、本当に大切な権利を実現しようとするなら、裁判慣れした弁護士に依頼するのがいちばんである。ただでさえ不利な被告なら特に。
いつも原告なので、被告の本人訴訟について書くのは最初で最後かも。答弁書の事件番号に「なんで(行ウ)やねん」と突っ込んだ人は訴訟マニア(笑)